TVアニメ放映直前!緋弾のアリアAAについて考える2 ~ライカと麒麟・初心者レズビアンの冒険~

この文章は、2015秋クールにアニメが放映される『緋弾のアリアAA』という百合作品について私が考えたことをまとめたものです。ネタばれを気にせず書かれているので、ネタばれなしの紹介が読みたいという方はこちら
「緋弾のアリアAA」はこんな百合好きにおすすめ - death not visited
からどうぞ。

また、『緋弾のアリアAA』の放送情報は公式サイトで確認してください。
ON AIR|TVアニメ『緋弾のアリアAA』公式サイト


###以上、前置き###
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女の子をかわいいと思う女の子

本シリーズの前回において、『緋弾のアリアAA』についてこう書いた。

緋弾のアリアAA』には、女の子をかわいいと思う女の子がたくさん登場する

一方、アダルトノベルゲーム『雫』については、こんな話が存在する。

サウンドノベルの手法でアダルトゲームを作るという前代未聞の試みについては、当初Leaf社内でも賛否両論が巻き起こった。協議の末、Leaf上層部からGOサインと引き換えに提示された条件は「開始5分でHシーンに辿り着けるようにせよ」というものであった。ゲームの形式はどうあれ、まずはユーザーが性的な欲求を手軽に満たせるものでなければ、アダルトゲームの市場には送り出せないという判断である(1998年「TECH GIAN」インタビュー記事より)。

雫 (アダルトゲーム) - Wikipedia

今回取り上げる火野ライカと島麒麟のカップルは、『緋弾のアリアAA』において、この「5分でHシーン」のようなものだ、と言うのは行き過ぎかもしれない。しかし、『緋弾のアリアAA』のあかりハーレムにおいて、「お互いのことをかわいいと思う女の子ふたり」すなわち「両思いの女の子カップル」という百合ハーレムには欠けがちな存在をあかり指向ではないライカと麒麟が担っていることもまた確かである。勿論、このポジションの重要さもあって、ライカと麒麟は「開始5分」の出番だけに留まることなく、『緋弾のアリアAA』の主要なキャラクタとして継続的に描かれている。今回はこのふたりの関係について見ていこう。

恋心は振り子みたいに揺れて……

「男女」と影で呼ばれるほどのパワーファイターで一見男勝りかつガサツな性格をしているが、実はかわいらしいもの、少女漫画やドールなどが大好きだという一面を隠し持つライカはあかりの同級生(高校1年生)。一方、麒麟は『女性専門要員、それもタチ向け』*1というハニートラップを専攻する武偵で、制服をフリルまみれに改造しているいかにもかわいらしい立ち居振る舞いの中学3年生。ふたりのなれそめは、誘拐された麒麟をライカがお姫様抱っこで助け出した、という事件で始まる。これをきっかけに、麒麟がライカを理想の王子様として見初め、戦姉妹契約*2を迫るのであった。
麒麟がライカを見初めた一方で、ライカもまた、大好きな少女漫画の登場人物のようだと、初対面から麒麟に一目惚れしている。はじめからお互いに対しての好感度が高かったふたりはめでたく戦姉妹として契約を交わすのだが、ここから、ライカの乙女心が激しく揺れ動きはじめることになる。
ライカの性格をすこし掘り下げてみよう。高い身長をはじめとした恵まれた身体能力を持つライカは、一方で「男女」といった陰口に傷つき、女の子らしい女の子にあこがれている。そして、かわいらしいものに惹かれるという自身の気持ちをひた隠しにいる。この性質は作中で麒麟から『武偵高では女子でも男勝りの活動が求められ』るため、『ストレスが溜まる』、その結果『自分にはないものを求め――ああいう少女趣味に走るッ』だと言われている*3。これとは別に、筆者は、ライカは自分自身をも含めた「魅力的な女の子」というものの取り扱いに慣れていないのだと考える。
ライカと麒麟の仲が進展するエピソードは、

  • 戦姉妹契約編:ドールショップでかわいらしいドールにでれでれするライカを麒麟が喝破し、自分がライカの心の隙間を埋めるのだと決意する。
  • 自覚宣言編:自分という者がありながら友人のあかりとも気軽にスキンシップをとるライカに麒麟が業を煮やし、自分以外のかわいい女の子にライカを取り囲ませて、その状況の中で「麒麟俺の嫁!」と宣言させる。
  • 女の子ランド編:麒麟の誘いで、ライカが「女の子ランド」と称したレズビアンの出会い系パーティに出席。同じクラスの友人に目撃され、かわいらしい姿をからかわれるが、途中で麒麟麒麟の先輩に「女の中の女」としてメイクやファッションを整えられ、友人たちを見返す。そしてこれがきっかけで、ライカは麒麟の所属する、ハニートラップ専門の特殊捜査研究科(通称CVR)にライカが交換入科することになる。

と、どのエピソードでも、ライカが麒麟に手を引かれて、自身の魅力や麒麟の魅力にしっかりと向き合いながら、女の子としての自身の扱い方や、麒麟との関係において成長していく過程が描かれているのである。何しろ、先に述べたとおり、麒麟は、『女性専門要員、それもタチ向け』のハニートラップ少女。女の子というものの魅力を引き出すのは、麒麟にとっては専門分野。すてきなお姉様をもっとすてきに磨いていきたいと思うのは、麒麟にとっては自然な感情であろう。あるときはライカをからかい、あるときはライカを立てるようにして導いていく彼女の姿は、小さくとも頼もしく、ライカへの愛に満ちている。手を引かれるライカもまた、困らされているというポーズをとることはあれど、麒麟をかわいく思う気持ちは出会い当初から変わらず、むしろ増しているように見える。上に挙げたエピソードにおいて、ライカが変わるきっかけとなるのはいつでも麒麟で、一生懸命に麒麟のことを想っているからこそ、ライカも成長してきたのだろう。お互いに愛し合い、高め合うふたりの姿は、戦姉妹カップルのひとつの理想型であろう。


以上、『緋弾のアリアAA』のうち、重要な位置を占めるカップル、火野ライカと島麒麟について述べてみましたがいかがだったでしょうか?いかがだったでしょうか、と書いたので、私は、マジで、あなたの貴重なご意見をお待ちしております。そして、この考察未満の文章は、次回、「TVアニメ放映直前!緋弾のアリアAAについて考える3 ~志乃と麗・ハーレム内カップリングの誘惑~」に続きます。

*1:緋弾のアリアAA』II巻p. 110より

*2:緋弾のアリアAA』におけるスール制度。1年限りのものである

*3:二重カギ括弧内はすべて『緋弾のアリアAA』III巻p. 8より