近所の魚屋さんで買った刺し身(切り落とし)うめえうめえ

田辺聖子 『新源氏物語〔上〕』 | 新潮社
紫の上とついに実質的夫婦になった源氏。「互いにあいてにのぞむのは、生きるのも死ぬのも一緒に、ということ。そういう男と女の仲を、ほんとうの妹背というのだ。……私と、あなたのことだよ」やはり生死のことを口にせずにはいられないようだ。
六条御息所との別れ「これで最後。これであのひとともお別れ。」「そう思いきめると、はや、御息所の心も身も、恋人をまつ情念に濃く染まって、痺れてゆくようだった。」「花やかな夕月夜となった。しかし二人の恋人は胸迫ってものがいえなかった」「思えば――青年がいつも欲するときに御息所に逢うことができ、御息所の方が、彼をよりふかく愛していたときは、青年は彼女の愛に慢心して、かえりみなかった。そうして、彼女のすさまじい嫉妬や怨念の本性をかいまみてからは心冷えて、青年は離れていった。」「しかしいま、こうして向きあってみると、昔の愛はまざまざと立ち戻ってくる。」「この年上の恋人の、深い愛に気付かず、それに狎れ、心驕った日のことが、くやしく思い返される」「あなたとわたくしの仲が終ったいまは、もう、人に笑われるだけなのですわ、未練がましいそぶりは。……恋の邸は空き家となり、人手に渡ったのでございます。わたくしたちはごきげんようと言い合って、おだやかにたのしく、お別れするのですわ」書き出すときりがないのでこのへんにしておくけれど、田辺源氏でも屈指の名場面だと思う。そもそも、「野の宮」という名称が好きだ。
「いったいに、この青年は、やさしげにみえながら、一面、剛腹なところがあるのであった。不遇のときも、その運命に捲きこまれて萎縮したりしない、ふてぶてしいものを秘めており、美貌に似合わぬ気骨のある青年なのである。彼は、失意の運命に挑戦して、かえって奔放に生きようとするかにみえた。」おお、田辺先生の源氏を嫌いにならないでくれの気遣いがここにも……!(私は特に源氏嫌いではないけど)(好きでもない)(女君のいろんな感情を引き出してくれる存在だなーとは思っている)。

ファスト源氏物語|第1話 若紫のアリバイ|tree
それで、戯れに田辺源氏で検索して、今の進捗にあわせて「第2話 六条御息所コンプライアンス」まで読んで、うなずけたのは「『賢木』の帖全体を見ると「光源氏と彼が愛する人々を次々襲う破滅の運命!」となってるがこうしてシーンを切り出すとわかりにくいな! ここがわかりにくいから余計『葵』の六条御息所の鬼モード部分ばっか注目しちゃうのかな! 『賢木』の展開が早すぎる。一帖に入ってていい破滅の量じゃない。」のところくらい。「いや紫式部斎宮のおわす野宮でのラブロマンスを書きたかったんだろうけどよ……この時代のイケメンといえば『伊勢物語』、斎宮を口説いてナンボ。でも伊勢まで追いかけるのは大変だしパクリに見えるから嵯峨野で……」らへん、わかりやすくしたいんだかわかりにくくしたいんだかわからん(このキャッチーさで狙う初心者は伊勢と嵯峨野の話ちんぷんかんぷんでしょ)(すでに話知ってる人笑わせたいならこのあとの源氏の感情の下りは「読解力ないんか??」って思われるだけでしょ)。
まあ、置いといて、いま「源氏物語千年紀 Genji」見たら楽しめそうなので見るかー。CV杉田智和の頭中将だけでも面白そう。

婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました | 小説サイト ベリーズカフェ
読了。タイトルとは裏腹に相思相愛だし、薬師もそんなに出て来ないので、タイトル詐欺やー!と叫ぶことになった。いや、本は悪くないんだ。さくっと読めるかるーいやつかと思ったら構成かっちり描写しっかりの硬派だったからギャップがね……。あとスターツ出版の書籍情報ページはこれでいいのか。なんか実用的すぎて戸惑うな。