読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TVアニメ放映直前!緋弾のアリアAAについて考える1 ~間宮あかり・落ちこぼれ主人公の系譜~

この文章は、2015秋クールにアニメが放映される『緋弾のアリアAA』という百合作品について私が考えたことをまとめたものです。ネタばれを気にせず書かれているので、ネタばれなしの紹介が読みたいという方はこちら
「緋弾のアリアAA」はこんな百合好きにおすすめ - death not visited
からどうぞ。

また、『緋弾のアリアAA』の放送情報は公式サイトで確認してください。
ON AIR|TVアニメ『緋弾のアリアAA』公式サイト


###以上、前置き###
次の話→ライカと麒麟・初心者レズビアンの冒険

緋弾のアリアAA』に男が登場しない理由

さて、『緋弾のアリアAA』(以下)という作品の主人公・間宮あかりについて語るために、まずは作品に関する基本情報をまとめておきたい。『緋弾のアリアAA』は、MF文庫Jから刊行されているライトノベル緋弾のアリアのスピンオフコミック作品である。連載誌は『咲-Saki-』で知られる、『オシエシラバス』、『思春期のアイアンメイデン』や、『夏色キセキ』のコミカライズが掲載されていたヤングガンガン。2015年秋現在、コミックス10巻、小説版が3巻刊行されている。
ところで、スピンオフという言葉は、百合作品にとってはマイナス要素になることが多い。私はかなり長い間twitterで、アリアAAいいですよ!と押してきたけれど、原作ライトノベルのスピンオフだという情報を出した途端に、原作を読んだほうがいい義務感が生まれてしまうひとは想像以上に多いらしい。すると、原作が長く、ヘテロハーレムであることは、途端に百合を読む上での大きな壁として立ちはだかってしまうのだ。
しかし私はこう問いたい。
「果たして、『とある科学の超電磁砲』(以下『超電磁砲』)を読むために『とある魔術の禁書目録』を読破した百合オタクはどれだけいるのか?と」*1
なぜならば、『とある魔術の禁書目録』と『超電磁砲』の関係は、『緋弾のアリア』と『緋弾のアリアAA』の関係と相似しており、しかも、『緋弾のアリアAA』は原作男主人公の出番が最小限まで制限されたかたちで描かれた物語だからである。下の表をご覧いただきたい。『超電磁砲』と『緋弾のアリアAA』を比較したものである。

表1. スピンオフとしての『とある科学の超電磁砲』と『緋弾のアリアAA』
f:id:ichigocage:20150929171218p:plain

超電磁砲』には、原作側の男主人公が幾度となく登場するが、『緋弾のアリアAA』の主人公・間宮あかりは、原作側の男主人公と関わる理由をほとんど持たない。しかも、『超電磁砲』は原作からして多くの男性キャラクタが存在するため、彼らが『超電磁砲』側に関わることも少なくないのだが、原作としての『緋弾のアリア』はハーレムものとして男性キャラクタを排除しているため、結果として、緋弾のアリアAA』には、ほとんど男というものが登場しないのである。
では、間宮あかりは、原作『緋弾のアリア』とまったく違う土俵で、どのように『緋弾のアリアAA』という物語を駆動させているのであろうか?ここからは、間宮あかりの百合ハーレム主人公としての特徴について触れていきたい。

落ちこぼれ主人公としての間宮あかり

さて、タイトルにも書いたように、間宮あかりの主人公としての特徴のひとつに、「落ちこぼれ」がある。しかも、『魔法科高校の劣等生』『アクセルワールド』に似た、作中の一般的な価値観では落ちこぼれだが、ある一定の条件下では大きな力を発揮する、という但し書きのつくタイプの「落ちこぼれ」だ。ただし、あかりの落ちこぼれはより根が深い。『緋弾のアリア』・『緋弾のアリアAA』に登場する多くの少年少女たちは凶悪犯罪の容疑者を、武力を持って、しかし殺さず逮捕する「武偵」という職業に就いているが、あかりの持つ技は「殺しの技」なのだ。だからこそ、あかりは、容疑者をかつて誰ひとり殺すことなく戦ってきた、最高ランクの先輩武偵にあこがれ、日々邁進していく――というわけ。
一方、原作者・赤松中学は、あかりにもうひとつ、重要な能力を与えている。「女人望」、と呼ばれるそれは、『緋弾のアリアAA』では「同性カリスマ」、つまり、周囲の女の子たちを惹きつけていく力だと言われている。*2実際、巻を重ねるごとに、あかりは周囲の女の子たちを敵味方関わらず戦いのうちに惹きつけてきた。そのなかには、あかりを放っておけないと思う者、あかりと友達になりたい者、あかりに過激な友情を抱く者、とさまざまなタイプの女の子たちがそろっている。彼女たちの誰もが、あかりが懸命に努力する姿に惹かれ、あかりをかわいく思い、あかりを取り巻いているのだ。見方を変えれば、緋弾のアリアAA』には、女の子をかわいいと思う女の子がたくさん登場する、とも言えるだろう。そして、戦いを経た絆であるがゆえに、あかりの持つハーレムは、『ゆるゆり』や『けいおん!』といった、ゆるやかな深い絆よりも、ちょっぴり過激な感情を伴う絆によって結ばれている。*3
落ちこぼれ主人公が、戦いのうちに自身への強い感情を持つ者を増やしていく――ライトノベルにおけるハーレムものの王道を、緋弾のアリアAA』は百合、女の子主人公をもってして描いた、唯一無二の作品なのである。


以上、『緋弾のアリアAA』の基本的な情報、そして主人公である間宮あかりについて述べてみましたがいかがだったでしょうか?いかがだったでしょうか、と書いたので、私は、マジで、あなたの貴重なご意見をお待ちしております。なお「女の子をかわいいと思う女の子がたくさん」、の部分のアイディアはA氏からいただきました。ありがとうございました。そして、この考察未満の文章は、次回、「TVアニメ放映直前!緋弾のアリアAAについて考える2 ~ライカと麒麟・初心者レズビアンの冒険~」に続きます。

*1:禁書目録』『超電磁砲』双方が好きな方にはここであやまらせてください。ごめんなさい。私は禁書目録はロシア編まで読破しました……番外個体かわいいです。ちなみに、私が『緋弾のアリアAA』を読むきっかけになったのがそもそも『緋弾のアリア』原作だったりします。

*2:ちなみに、「天然女人望には女下士官の仲を取り持つ『友情錬成(フリーラブ)』の能力もある」ということが、『緋弾のアリアAA』IX巻p. 81で明言されています。

*3:ここの部分を、『ゆるゆり』、『けいおん!』への批判だと思われないように書くのは非常に難しかったです。というか、たぶん失敗しています。ただ、いわゆる『日常系』の百合作品とは、異なった質の百合作品であることを、改めて強調したいと思います。